トルストイ民話『人はなんで生きるか』

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5000人記念はトルストイの『人はなんで生きるか』です。

レフ・トルストイは『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』などの大作を残したロシアの文豪です。
彼は後期(転回後という)、宗教的で道徳的な作品を残すようになります。
その中のひとつが「トルストイ民話集」に収められている『人はなんで生きるか』です。
解説によると、トルストイはロシアの民話を基にして1881年の1年殆どを費やしてこの短い作品を書き上げました。


『人はなんで生きるか』は、セミョーンという貧しい靴職人がひとりの青年を拾うことから始まります。

セミョーンはその日、靴代の集金に出かけてその代金でコートを買う予定でした。
しかし、お客の誰ひとりまともに代金を支払う人はおらず、セミョーンは貰った僅かばかりのお金でヤケ酒(ウオッカ)をあおって帰るところだったのです。
青年は教会の陰に隠れるようにして裸で座っていました。

セミョーンは迷ったあげく、青年に自分のコートを着せてやります。
青年…ミハイルの話すことには、彼がああして座っていたのは神の罰だと言うのでした。

集金も出来ず、ワケの分からない男まで連れ帰ったセミョーンに妻・マトリョーナはさんざんに怒ります。
しかし、セミョーンが感じた同じものをマトリョーナも感じて、ミハイルに夕飯を恵んでやりました。
すると、ミハイルはにっこり笑うのでした。

それからミハイルはセミョーンの許で靴作りを習って暮らすのですが、彼は殆ど笑うことはありませんでした。
もう1度ミハイルが笑ったのは、威張り散らした大金持ちのお客さんがブーツの依頼に現れたときでした。

そして、最後にもう1度だけミハイルは笑うのですが…。


私が初めてこの作品を知ったのは、『ロシアのフォークロア』という本の中でした。
トルストイは民謡や古代英雄譚の語り手から伝説を聞いてすぐに『首天使』のタイトルでこの作品の基となるものを書き上げました。

『首天使』では、物語の始まりに天使が出てきます。
それを、トルストイは推敲を重ね、セミョーンの場面からのスタートになったのですが、ネタバレで
(基の段取りで)読んだ方がきっと感動が大きかったと正直思います。私のように…。

しかし、トルストイは子供に分かり易くする為に推敲を重ねたといいます。
絵本にするのであれば、やはり推敲後の方がスムーズでしょう。
この膨大なメッセージをトルストイは子供たちに向けて発したのです。

『人はなんで生きるか』は児童用の『トルストイの民話』や、岩波文庫の『トルストイ民話集 人はなんで生きるか』で読めます。
宗教関係なく、人間の愛について感じることの出来る本です。

上の絵は大昔に出た『トルストイ童話集』の川上四郎の挿絵です。
初山滋ほど有名じゃないのか、画集は手入し辛いです。