『散華―紫式部の生涯』

イメージ 1

すこしご無沙汰しておりました。すみません。

今日、紹介するのは杉本苑子著『散華―紫式部の生涯』です。
物語は少女の紫式部が先祖の墓参りするところから始まります。
シンデレラガールとなったその人への思いから、紫式部の果てしない思考はスタートします。

そして、花山天皇時代の華やぎ…。
花山天皇は生母に藤原摂関家を持たない天皇だったので、にわかに時めいた人々がいて紫式部は思いがけず、その渦中に関わっていきます。

摂関家によって仕掛けられた突然の花山天皇の出家…紫式部は人々の盛衰を目の当たりにしたのでした。
この、宮仕えに出るまでのところが本当に面白いです。

姉を失った紫式部はやがて結婚します。
このくだりは大体どこででも語られている通りで、ひとりむすめを残して夫が先立ってのちに彼女は宮仕えに出るのでした。

女王として君臨していた皇后定子はすでにおらず、華やかな生活に気後れしながらも彼女は今まで通り
決して渦中に巻き込まれることなく、客観的に物事を見つめています。
そして、式部の中で「彰子」という掛け替えのない存在が生まれます。


正直、この本を読むまで彰子に対してあまりいい印象がなかったのですが(お嬢様的過ぎて…)、
ちょっと思い直すことがあったのもこの作品のおかげでした。
伊周の女(むすめ)を女房にしたり、「空気を読めない」ところのある彰子ですが、空気を読まないという美徳もまた彼女に備わったものだったのだと言われれば、成程そうかと思うのです。

一条天皇に自分より愛する女がいたとして、定子は変わらず振舞えたか…というと分かりません。
ただ、本当に愛し合って、お互いしかいなかったカップルが1300年も昔の天皇と皇后だったとしか、私には言えません。

しかし、それを見守れたのは彰子だからこそ、だったのです。

そんな思いにさせてくれる本です。
写真は「散華」で撒く花びらを模したものです。
門跡寺院展より。


いや~、忙しかったです。
留守の間お越し下さった皆様すみませんでした。